(2021-)
この写真シリーズは、2021年の春から始めたもので、自分で描いたサクラの切り株の絵を家から歩いて行ける範囲内で風景の中に置いて撮影しています。絵のサイズはF20号(606mm×727mm)です。
ある日、いつも見慣れている風景がどこか違うことに気づきました。毎日行き交っている道路も、道路わきの家並みも変わらずそのままなのに、目の前の風景の何かが違うのです。あれ、どうしたのだろうと歩くリズムを変えてみたところ、サクラの木が切られていることに気づきました。春が来れば必ず花をつけていたサクラ。サクラの花の下を歩きながら過ぎた時を思い出し、考え、そしてこれから新しく始まる暮らしや時間に思いを馳せていました。
そんな経緯もあり、ただ通り過ぎていた場所にも、ここにもサクラの木が生えていたかもしれないと思うようになりました。このシリーズに取り組むまでは、ただ通り過ぎるだけの場所や光景でも、切り株の絵を置いて足を止めるようになったことで、いつの間にか身の回りの風景と対話するようになりました。
撮影は日没前の時が移り変わる隙間に試みますが、灯る家々や街灯の明かりの中に、その地に流れた時間や今ある暮らしを想像しシャッターを押しています。